第11話
アパートのドアを開けると、部屋の中の空気は冷蔵庫並みに冷え切っていた。
照明を灯し、狭いダイニングの奥の六畳間へと駆け込んだ私は、すかさずレジ袋から梱包シートに包まれたストーブを取り出した。
かじかむ指で乱雑にシートとビニールを剥がし、それらを丸めて特大レジ袋に突っ込む。
そして、ステンレス製の反射板が新品の輝きを放つ電気ストーブの、その太くて黒いコードの束を解き、ベッドの足元からのぞいている延長コードのコンセントにプラグを差し込んだ。
スイッチをひねると、ヴィーン、と小さな唸りを立てて二段になっているヒーター部分がじわじわと赤く灯り始める。
ヒーターが温かくなるに連れて埃が燃えたような焦げ臭さがしばし漂ったけれど、それも程なくして気にならなくなった。
ストーブの前面から放たれている熱に、かじかんだ両手を翳し、続けて足先も翳してみる。
「うほぅ、あったか~い」
思わず浮かれた声を漏らしてしまった。
これはいい。
冷え症の私にとって、このアイテムは真冬の強い味方になりそうだ。
あんな場所でも、こんな場所でも、と、シミュレートしながらヒーターを見つめていた私は、ふと、冷え切った身体の背中の部分だけが妙に暖かくなっている事に気が付いた。
この程度の大きさのストーブでは、部屋全体が暖まるまでに時間がかかるだろうから、このぬくもりは私の気のせいなんだろうけれど。
……けど。
……だけど。
……なんか…やっぱり…暖かい。
なんていうのか……ストーブからの直接的な熱とは別次元の、微かな……。
なんだろう。
背後からほわんと、太陽の光のような圧力を感じる……。
それを自覚した途端、ストーブからの小さなモーター音に共鳴するように、キィィィーという、こめかみをつんざく耳鳴りが私の聴覚を襲った。
私は、恐る恐る背後をふり返った。
「……!」
息を呑み込み絶句した私の目の前には、金色のオーラを纏った大きな光の球体が浮かんでいた。
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