第5話

工場の脇の広い道路の向こう側にある『星玲(せいれい)幼稚園』。




その幼稚園の塀の内側から聞こえてきているんだ。




正門に掲げられた看板には『クリスマス チャリティーバザー』と大きく書いてある。




なるほど。




一足早くクリスマスイベントが行われているって事か。




ほんの少し前まではウンザリだと思っていたクリスマスソングだけれど、幼稚園のイベントで流れている分には全く気にならないから不思議だ。





…というか、むしろホッとする。




クリスマスっていうと、カップルでイチャイチャするためのイベント、みたいな感じで私の周囲は浮つくけどさ。




本来はキリスト教の神聖な行事で。




それをイベントとして楽しむにしても、こういう小さな子供達がプレゼント交換したり、家族でケーキ食べたりして楽しむモノであって……。




ああ、いや…止めよう。




まるっきり、彼氏無しの女のヒガミそのものだ…。





私は自己嫌悪に陥りながら、幼稚園の正門の前をいそいそと通り過ぎる。





「あっ、よろしかったらどうぞ~。見ていってください~」




突然正門の向こう側から声をかけられて、私は反射的にふり返っていた。




視線の先には、父母の会と書かれた腕章を腕につけた女性が立っていて、笑顔でチラシを差し出していた。




「えっ、あの、私、ただの通りすがりで……」




慌てて首を振ると、彼女はつかつかと近づいてきた。

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