第30話

「……っぷはっ、はぁっ。……ったく、乱暴なんだから」





脱力した私の手からクッションを払い除けて、朋紀は飛び起きた。





掛けていた毛布がずり落ち、露わになった彼の上体を、カーテンから透過した光が柔らかく照らしている。




私は、急に高鳴り出した心音を封じ込めようと、身体に巻き付けたベッドカバーを無意識に握りしめていた。





「さっきは、あんなに従順で可愛いかったのに……」






記憶に耽るような表情を浮かべて、朋紀は、ため息混じりに、そう、ぼやいた。





「………っ」





恥ずかしさのあまり言葉を失い、身体を硬直させてしまった私の髪を、彼は、楽しそうに指で玩んでいる。

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