第20話

銀色の細い輪と、中央にあしらわれた小さな煌めき。





私は、自分の指を飾る華奢な指輪に、心臓の高鳴りを抑えられなかった。





「これ……朋紀が買ったの?」





自分でも呆れてしまうほどの醒めた言葉が、口をついて漏れ出ていた。





気持ちが高ぶりすぎて、気の利いた言葉が全く浮かばない。





……ううん、違う。




浮かばないんじゃなくて……。





言葉では……多分、この気持ちは伝えきれない……。






「当然っ。夏休みと冬休みにうちの会社でバイトして買ったんだよ。……石が小さいし……さすがに昨日の席で渡すのは気が引けて……。でも、一応、婚約指輪のつもり」





私の無粋な問いかけに文句も言わず、朋紀は、照れくさそうな顔で言葉を続ける。





「まだ先の事だけど、結納の時はもっとデカくて、カットやクラリティのグレードが高いヤツをあげるから。今は、これで許して」

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