第19話

「打てる手は全て打って……それでも、まだ……足りないぐらい」





苦笑しながら呟くと、彼はジーンズのポケットから何かを取り出した。





彼の指先には……銀色の……細いリング……。





それを私の薬指に嵌め込むと、彼は、その部分に彼自身の額を押しあてて瞼を閉ざした。





「この印に、どれほどの効力があるんだろう、って、思う」





疑いの言葉は、まるで祈りのように静かに紡がれて……。





彼の手から解放された私の手は、彼の額から受けた熱の余韻を帯びたまま、頼りなく宙に留まった。

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