第17話

警戒心むき出しで顔をしかめている私の様相に呆れたのか、朋紀は、ハァ、とあからさまにため息をつき、目元にかかった髪をクシャリとかき上げた。





「悪かったよ。……強引に婚約の話、進めちゃって……」





バツが悪そうに視線をそらすその表情は、拗ねた子供のよう。





「瑠羽があんまりノリ気じゃなかったのは分かってたけど……瑠羽が社会人になると思うと……気が気じゃなくて」





自嘲気味に言うけれど、その声音はとても苦しそうで、聞いている私の方が泣いてしまいそうになる。





「婚約しておかないと……他の誰かに奪われそうで……傷つけられそうで……不安で」




そう紡いで唇を噛みしめた朋紀に、私は思わず身を乗り出して詰め寄っていた。

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