第9話

「片付けは終わってる。今日は、元々、ここに来るつもりだったんだ」





「え?……それならそうと、昨日、言ってくれれば……」




「でも、家族もいたし。なんとなく言いそびれちゃってさ」





朋紀のその言葉に、私は思わず、棚から取り出したばかりのグラスを握りしめてしまっていた。




そう言えば、お母さん……、朋紀の家に泊まったんだっけ……。




「あっ、あのさ、うちのお母さん、みんなの前でボロだしてなかった?」




料亭での会食の時は、持ち前の八方美人根性で淑女になりすましていたけれど……。




香坂家でお酒でも勧められていたら、どこまでソトヅラを保てたか……。




「大丈夫だったよ。……しかし、あれだよな、笠木のおばさんって気さくだよな~。兄さん達ともすっかりうち解けてたよ」




「うわ~………。」




あまり大丈夫っぽくない報告に、ペットボトルを持つ手が震えてしまう。




それでも辛うじてアイスティーをグラスにそそぎ、私はそれを手にテーブルの前へと戻った。

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