第9話
「片付けは終わってる。今日は、元々、ここに来るつもりだったんだ」
「え?……それならそうと、昨日、言ってくれれば……」
「でも、家族もいたし。なんとなく言いそびれちゃってさ」
朋紀のその言葉に、私は思わず、棚から取り出したばかりのグラスを握りしめてしまっていた。
そう言えば、お母さん……、朋紀の家に泊まったんだっけ……。
「あっ、あのさ、うちのお母さん、みんなの前でボロだしてなかった?」
料亭での会食の時は、持ち前の八方美人根性で淑女になりすましていたけれど……。
香坂家でお酒でも勧められていたら、どこまでソトヅラを保てたか……。
「大丈夫だったよ。……しかし、あれだよな、笠木のおばさんって気さくだよな~。兄さん達ともすっかりうち解けてたよ」
「うわ~………。」
あまり大丈夫っぽくない報告に、ペットボトルを持つ手が震えてしまう。
それでも辛うじてアイスティーをグラスにそそぎ、私はそれを手にテーブルの前へと戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます