第2話

朋紀は三月上旬に高校を卒業したばかりで、私は先週、大学を卒業したばかりだというのに。




卒業式の後に卒業パーティーや謝恩会が開催されるように、さも当然の流れと言わんばかりのノリで婚約の日取りが決められて。





正直、『婚約』という言葉を、噛みしめる余裕もなかった。





けれど、急に進展した婚約話に困惑していたのは私だけ。





母曰く「今すぐ結婚するわけじゃないんだから、いいじゃない」で。




朋紀のお母さん曰く「お祖母様を早く安心させてあげたくて」で。




朋紀のお父さんも、お兄さん達とその守り役達も、それから朋紀のお祖母さんも「善は急げ」で……。





全員グルなのか?と勘繰りたくなるほどに、本件に関わる主要人物の中で、この時期の婚約に異議を唱える人はいなかった。

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