第19話

瑠羽は俺の事をガキ扱いするけど、こんな時の瑠羽は、俺なんかよりも全然ガキで。




変に年上としてのプライドみたいなものも抱え込んでいるので、本物のガキなんかより、ずっと扱いにくい。



俺が一歩譲って、瑠羽の意見を尊重してあげる方向で話を進めないと、大概上手く行かない。



逆に、その方向ですすめると、意外と俺の思惑通りに瑠羽を懐柔することが出来たりする。




‥‥‥‥‥という事で。





「どういうのならしていいの?」




俺は、出来る限り控えめな口調で、瑠羽に問いかけた。




その上、ちょっと、悲しそうなそぶりをして見せれば、瑠羽は、不機嫌ながらも、きっと揺らいで‥‥‥。




「ど、どういうの‥‥‥‥‥って‥‥‥」




ほらね、そう訊き返してくるんだ。





愛しいよ、瑠羽。




そんな、素直さも、優しさも。





「瑠羽がしてもいいって思うコト、教えて」




振り向いた瑠羽をまっすぐ見つめて、俺は、微笑む。




ホンネと計算の比率は、7:3ぐらいで。




「‥‥‥‥‥」




戸惑いを隠せず、視線を彷徨わせている瑠羽の、その無防備な唇にもう1度触れたい衝動に駆られるけれど‥‥‥。




ここで俺が手を出したら全てが台無し。




瑠羽がどう出てくるのかを、根気強く待たなくちゃ。





『こんな事、女の子に言わせるなんて、無神経で悪趣味だ』って、憤慨されて終わっちゃうか‥‥‥。




『人前で手を繋ぐだけ』って、手厳しく宣告されるか‥‥‥。




そのどちらかの答えが返ってきそうな雰囲気だけど、瑠羽が本当にそれを望んでいるなら、それはもう、どうしようもないことだから。




そうなってしまったら、俺は潔く、正式な婚約をいかに速やかに済ませるかに、全力を注ぐだけだ。





しばしの沈黙に俺がため息をつくと、瑠羽は、それまで気まずそうに俯かせていた顔を上げた。

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