第16話

瑠羽の体が、弛緩していく‥‥‥。




俺の掌がそう感じ取った瞬間、瑠羽が背後に倒れかかり、俺は咄嗟に、彼女の上体を抱きかかえた。




驚いて唇を離し、瑠羽の様子を確かめると、俺に抱きかかえられた瑠羽の顔は青ざめていて、その眉は苦悶に歪んでいた。




「はっ、‥‥‥はぁ‥‥‥っ」




「瑠羽?」




苦しそうに瞼を閉じたまま荒々しい呼吸を繰りかえす瑠羽に、俺は、静かに呼びかける。




「ん‥‥‥なっ‥‥‥‥‥な‥‥‥」




瑠羽は、うっすらと瞼を上げて、息も絶え絶えに声を漏らした。




「な?」




「なんて執拗なっ!」




「え」




執拗‥‥‥。




否定はしないけど‥‥‥‥そんな言い方、あんまりだ。




体勢を立て直した瑠羽に突き飛ばされて、俺は呆然とベッドの上に座り込んだ。




気持ち良くなかったのか?




俺は、気持ち良すぎて、もっとしていたかったぐらいなのに‥‥‥。




でも、彼女は物凄く憤慨した顔で‥‥‥。




「しかも、いきなりっ、ひっ、酷っ‥‥‥、もっ‥‥‥最っっ低っ」




涙声で手厳しい一言を俺に言い渡し、瑠羽はベッドの上に座ったままそっぽを向いてしまった。

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