第13話

「ちょっとっ!?」





後ろから声をかけてくる瑠羽を顧みず、瑠羽の部屋のドアを開けて灯りをつける。




靴を脱いで、瑠羽の香りが立ち込める部屋に踏み入り、俺は、大量の書類と本とテキストに占拠された床の手前で足を止めた。



確かに、瑠羽の言うとおり、部屋の中は雑然としている。



けれど、瑠羽が言うほど、散らかってはいないし、狭くもない。



こんなの、俺を部屋に入れない理由にならない。






「ああ、もうっ。‥‥‥‥‥ね?だから言ったでしょ?‥‥こんなだから、座るトコ、ないんだよ」




「あるだろ」




俺は手にしていたバッグと鍵を足元に置いて、慌てて床を片付け出した瑠羽の身体を抱き上げた。



「えっ!‥‥‥うわっ?」



驚きのあまり抵抗するコトすらできないのか、瑠羽の身体は、あっさりと俺の腕の中に納まった。



こうして瑠羽を抱き上げるのは初めてだけれど。




予想以上にその重みがあっけなくて、一瞬、動揺してしまった。




こんなんじゃ、どんなに暴れられたって、どうにでもできてしまう。




この頼りない器に、強く頑な魂。





その意外性が、恨めしくて‥‥‥でも、たまらなく愛おしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る