第11話
そして、今、俺は、瑠羽のアパートの前にいる。
時間は、夜の7時半。
一応、瑠羽を送り届けるという名目で、ここまでついてきたけれど。
小学生じゃあるまいし、この時間で、じゃあまたね、っていうのはあり得ないだろ‥‥?
折角、瑠羽が、俺を彼氏扱いしてくれるようになったのに。
でも‥‥‥‥そう思っているのは、どうやら俺だけのようで。
「送ってくれてありがと。気をつけて帰ってね」
瑠羽は、そう言いながら、俺が肩にかけているトートバッグに手を伸ばしてくる。
「まだ帰りたくない」
俺は、すかさずバッグを抱え込み、瑠羽の手を逃れた。
『帰りたくない』と言うのも、もうこれで3度目。
子供じみたコトを、と、非難されようが、構うものか。
部屋に入れてもらうまで、バッグは渡さない。
「もうっ。我が侭言わないの。テスト前だし、早く帰った方がいいでしょ」
瑠羽は、いつもそうするように、呆れた口調で俺を窘める。
でも、今日の俺は‥‥。
ガキみたいに窘められたままで、終わるつもりはない。
「勉強の方は問題ないって言ってるだろ」
「それだけじゃなくて。遅くなるほど寒くなるし。風邪引くといけないから」
彼女は、あからさまにため息をついて、バッグの中から鍵を取りした。
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