第10話

瑠羽と手を繋いで巡る世界は、それまで見てきた世界とはまるで違って見えた。




今まで、2人で外出する事自体、そんなに回数があったわけじゃないけれど。



その数少ない屋外デートでも、瑠羽は、俺との間に、人1人分ぐらいの距離を置いて歩いていて。




手を繋ぐどころか、視線すら合わなくて。




人混みに入ると、まるで他人同士みたいに離れてしまう事もザラだったから。




手を繋いだだけで、2人の距離が一定以上広がらなくなる事に‥‥‥‥そんな当たり前の事に、俺は心から感激した。




それから、鏡に映る2人がどう見ても彼氏彼女の関係にしか見えない事に、感動して‥‥‥‥嬉しくて、口元が綻んで仕方が無かった。









瑠羽オススメのカフェでケーキを食べて。




それからCDショップをのぞいたり、本屋に立ち寄ったりして。




パスタの専門店で少し早めの夕食も済ませて。




さあ、今度は何処へ行こうか、と訊ねようとした矢先に、瑠羽は、俺にプレゼントのマフラーを手渡して「帰ろう」と言い出した。



俺は、瑠羽がそう言い出した事に納得できなくて、いつのも調子でゴネてみたけれど、瑠羽は俺の要望を聞き入れてはくれなかった。

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