第6話

12月上旬の昼間の寒さは、大寒の頃のそれと比べれば、かなり人に優しい。




だから、駅前で瑠羽を待っているのも、全く苦痛ではない。




日向に立っていれば、秋物のジャケットでも充分って思うぐらいの小春日和だけれど、俺は、あえて冬物のジャケットを羽織ってきた。




日が沈むと、結構寒いし。



瑠羽とは、時間が許す限り一緒にいたいし。




瑠羽が「海が見たい」とか「遊園地に行きたい」って、言いだすかもしれないし。




‥‥‥って、午後1時の待ち合わせで、それはないか‥‥‥。




人目も気にせず項垂れていると、落とした視線の先で黒いブーツを履いた女の子の足が立ち止まった。




「お待たせ」




声をかけられて顔を上げると、予想に違わず、そこには瑠羽が立っていた。




白いハーフ丈のコートと、グレーのスカート。




相変わらず地味だな。




だけど、地味なくらいが丁度いいって思うほど、瑠羽は綺麗だ。




今日の出で立ちもきっと、瑠羽の大好きなノーブランドのお手ごろ価格な服ばかりで揃えられているんだろうけど、とても上品に着こなしてる。




これで、男にモテないと悲観しているあたり、イヤミな女だよな~、って、思われそうなものだけど。




実際に、本当にモテなくて、周囲から同情されているぐらいなのだという。




理由は、異性から見て可愛げがないとか、言動に色気がないとか。




‥‥‥‥まあ、それに関しては、俺も同感。




堅物だし、理屈っぽいし、気が立っていると粗暴な言動するし。



礼儀正しいし気立ても良いって、うちの親戚の間では、瑠羽を評価する声もあるけれど。




それは、瑠羽の外面に対する評価だし。




勿論、俺としては、瑠羽の良いところも悪いところも全部、愛しくて仕方がないけどね。




そもそも、モテなくて大いに結構。




瑠羽は俺のものなんだから。

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