第12話 『強者は最高の獲物』
俺たちが生徒会室を出て校舎を出ると第一訓練場に行ったきり帰ってこなかった、スペルタとロアノが待っていた。
「あら、ずっと待っていたの?」
「はい、俺たち対皆で戦っていたんですが、まぁ、すぐに全員を倒してしまい、お嬢方が何処に行ったのかも分からなかったのでここで待っていました」
・・・・・・
・・・・・・
俺が訓練している学生たちに近づくと学生たちは・・・
『な、なんだ!』
『にげろ!!」
『不審者だ!!』
などと言われてしまった。俺は訓練場の真ん中で壁際に逃げている学生たちを見ていると後ろからロアノが来ていた。
『ロアノ、なぜ皆俺から離れているんだ?』
『そりゃ、こんな怖い人が凄い勢いで向かってきたら誰でもビビるでしょ』
俺はロアノの言葉を聞き、思いっきり息を吸った。
『俺はスカシユリ王国から来た護衛のスペルタと言う者!これから俺たちとお前たちで交流戦といこうではないか!!』
俺は持っている剣を上に向けて言った。それでも学生たちはこちらに来ない。それどころか逃げようと第一訓練場から出て行く奴らも居た。
俺は期待していた。大陸一の大国で大陸一の学園の学生。そして先ほど見た戦闘訓練も学生にしては出来すぎなほどだった。
俺の座右の銘は『強者は最高の獲物』
俺は10歳で騎士学院に入ってからずっとこの座右の銘を掲げて生きて来た。自分が強いと思った者には積極的に挑み、挑まれればそれを受ける。どれだけ差があろう相手でも俺は戦ってきた。そして強くなった。
その経験があるからこそ俺はここに来た。自分勝手だと思ってくれても構わない。スカシユリ王国の印象が悪くなっても構わない。こいつらには未来がある。それなのにこんな絶好なチャンスを活かさない俺には分からない。
ここに来るまでは血気盛んな学生だらけだと思っていたら内気盛んな学生だらけだった。
『大陸一の学園と期待して来てみたらその中は弱虫ばかりか!がっかりだ!』
俺は学生の皆に聞こえる声でそう言った。ロアノに「戻るぞ」と言って第一訓練場から出ようと歩き出すと・・・
『ざん"てつっ!!』
後ろから殺傷性の高い斬撃魔法「斬鉄」が聞こえて来た。俺は身体のぎりぎりで振り返り剣を振った。
『斬鉄!!』
こちらへ来る斬鉄を俺の斬鉄で空に弾き返した。俺が弾き返した斬鉄は雲をも斬った。
周りを見ると皆俺たちに向かって剣を構えていた。先ほどと違うのは皆俺たちを「敵」として。
『先ほどの言葉は我慢ならない!俺たちは弱虫などではない!』
そう言うのは男の生徒で赤目を持っている超人。身体の出来は学生にしては凄いものだ。先ほどの斬鉄も。
『なら!俺にそのことを証明してみろ!!』
俺がそう言うと俺たちの周りの何百人と言う生徒が俺たちに向かって走ってきた。それに応えるためため俺も剣を両手で持ち先ほどの超人の学生に向かって剣を振った。剣を振り俺は斬撃魔法の「六等斬」を放った。
「六等斬」は名前の通り六個の斬撃を放つ魔法。だが普通と違うのは、最初は一個の斬撃から始まりこの斬撃を躱せず剣など物理障壁などで受け止めてしまうと一個の斬撃から六個の斬撃へ増える。そして六個へ増えた斬撃がそれぞれ違う方向へ行き敵を襲う。
「六等斬」を使える人は少ない。魔力はそんなに必要ないがこれは爆発的な身体能力がないと使用できない魔法。なのでこの魔法は赤目を持つ超人限定の魔法と言える。本当に才能有りきの魔法だ。
超人の学生は俺の「六等斬」を受け流して斬撃が六個に増えた。皆驚いている。
俺は「六等斬」を放って周りを見るとロアノが尻もちをついていた。
『どうした、ロアノ。ビビっているか?』
『はぁ?あんたの斬撃がこっちに来たからとっさに受け流したらこうなったんだよ』
ロアノは俺にそう言うと立ち上がり剣を構えた。
「ロアノ行くぞ!!」
「はい!!」
そして俺たちは学生たちと戦った・・・
・・・・・・
・・・・・・
「みたいな感じで戦ってたら全員地面に倒れてたんですよ」
あぁ~、だから第一訓練場の横を通った時に学生たちが初めに見た時のような元気がなかったのか。いや、本当に、学生たちかわいそうだな・・・
「まぁ、でも、学生たちの刺激にはなったと思いますのでありがとうございます」
それを聞いてスペルタは笑っていたが、ロアノは「こちらこそ、怪我とかしてたらすみません」と言って頭を下げていた。
ロアノは手加減を知っているから怪我はさせてないだろうけど、スペルタは楽しくなると手加減を知らなくなる。あの数の生徒をすぐに倒したのだから怪我人は絶対いるだろうな。
「って言うかディア、お腹は大丈夫ですか?」
「は、腹?」
「え、えぇ・・・」
俺は腹のことをステナリアに聴かれた瞬間何のことか分からなかったが、自分の腹を触ってみると生徒会室での出来事を思い出した。そして自分の死を悟った。
最愛の兄と久しぶりに会えたのに俺の嘘ですぐ帰ることになったことをステナリアが知ったら、俺は、俺は・・・
俺は考えるのをやめた。そしてこれは生きることをやめると同義である。
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