第17話

援助を受けているなんて聞いて、すっかり頭に血が上っちゃって、肝心な問題に触れるのを忘れてしまうところだった。



今すぐお金が返せないのは仕方が無いけれど、朋紀との性格の不一致を理由に、今回の世話役だけでも断らなくちゃ。



あんなヤツに振り回されていたら、私の大学生活、真っ暗だもん。




「お金の事はそれでいいけど、あの息子の面倒を見るのは、絶対に無理だからっ。全然、形だけって感じじゃないし、凄く馴れ馴れしくて、横柄で‥‥‥。私達、メチャクチャ相性悪いと思うの。お母さんの方で適当な理由つけて断って。ねっ?」



私がそう言い終わるや否や、お母さんは、プッ、と吹きだした。




「相性って、そんな、お見合いじゃあるまいし~。瑠羽の方が四つも年上なんだから、ちょっとぐらい我慢してやりなさいよ。あの年頃の男の子って、シャイだったりするでしょ?きっと彼なりに、親しくなろうと努力してたのよ」



「シャイ‥‥‥っ!?」




どこをどうしたら、あの憎憎しい態度を『シャイ』で片付けられるというの?



それよりも、このやるせなさを、私は今、どうしたら‥‥‥?





「この前の水曜日に朋紀くんと会ったけど、礼儀正しいし、良い感じだったよ?小さい頃も凄く可愛かったけど、すっかりカッコよくなっちゃって、お母さん、ドキドキしちゃった」




お母さんは、夢見るような口調で香坂朋紀を褒め称え始めた。



そんなお母さんの言葉を黙って聞き流す事だけが、今の私に出来る精一杯の反抗だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る