第16話

「‥‥‥私、あの町に就職するつもりないし、まして香坂家の世話になるなんて、あり得ないし。‥‥‥お母さん、おかしいよ?お母さんの友達の家の事だからあまり悪く考えたくないけど‥‥‥香坂家の都合のいいように利用されてると思う」





香坂家の方に本当に悪意は無いのだとしても、今の私には、そうは受け止められない。





香坂朋紀の、あの馴れ馴れしさと、横柄さと、馬鹿にしたような態度で、私の中の香坂家のイメージは最悪。





どんなに立派な家柄だろうと、地元の評判が良かろうと、私にとっては香坂朋紀=香坂家だ。





「やだ、瑠羽ったら、大袈裟ねぇ。うちみたいな庶民に利用価値なんて1つもないじゃない。借金の事は、香坂さんのご厚意を考えると、今すぐつき返すような真似はできないけど、何かのタイミングできっちりお返しするから、ねっ?」





お母さんの口から出た「きっちりお返しする」という言葉に、私の気持ちは、一瞬、晴れた。






でも、まだだ‥‥‥話はまだ終わってはいない。

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