第15話
物心ついた時から母ひとり子ひとりの生活で、私を育てる為に頑張って働いてくれているお母さんに向かって、本当はこんな我が侭、言いたくなかった。
でも、どうしても、香坂朋紀には借りを作りたくない!作ってはならない!
きっと、私のこの必死な声を聞けば、娘がどれだけ困っているのか、お母さんだって分かるはず。
そう信じて、お母さんの反応を待っていたのだけれど、電話機からは「まあまあ」と私を宥めるような声が聞こえてきた。
「別に、逃れなくてもいいじゃない。あの町では、香坂家とご縁があるのは良い事だって聞いたわよ?卒業後の就職が上手くいかなくても、あのあたりの会社なら、どこでも口利きするからって、香坂さんが言ってくれてるし」
我が母親の言葉ながら、耳を疑ってしまう‥‥‥。
お母さんが、そんな事を考えていたなんて。
そりゃ、世の中、綺麗ごとばかりでは生きていけないし、娘の将来を案じる気持ちも充分伝わってくるけれど‥‥‥。
今は、お母さんの口からそんな言葉、聞きたくなかった。
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