第14話

「い、いくらっ?」



「100万」



金額を聞いて、両目に溜まっていた涙も、たちまち涙腺に引っ込んだ‥‥‥。




なんでそんな大金、友達の家から借金できるの?



っていうか、借りなくちゃ、ダメだったの?




「どうして、そんな‥‥‥あれはどうしたのっ?ほら、お母さんの会社の、教育費貸付制度のっ」



お母さんの勤め先には、社員向けの貸付制度があって、教育費目的で借りられるって聞いていた。



あの時は満期を迎えた預金もあったはずだし、更に追加で借りる必要なんて、無かったはずなのに。




「ああ、あの融資?‥‥‥受けてないよ。」



「えっ?」



「だって、香坂さんから借りたら、お金、間に合っちゃったから」



「ちょっと、聞いてないよ、そんなのっ。確かに、私、大学に行かせて貰って有り難いと思っているけど、それは、お母さんが会社から融資を受けてくれたおかげだって思ってて‥‥‥。香坂さんから借金するって知ってたら、私、無理に進学なんて‥‥‥っ」



「ああ、ゴメン、ゴメン、ちゃんと話しておけば良かったよね、ホント、ゴメンっ」




さすがに、娘が怒っていると気付いたのか、慌てて謝ってるけれど‥‥‥声がちっとも謝ってない。




「でもねぇ、お金、一方的に送ってこられちゃったのよ。‥‥‥ほら、守り役とかっていうヤツの、その恩義があるから、是非お祝いさせてくれって言われて。勿論、お祝いとはいえ、そんな大金は受け取れないって、断ったよ?だけど、しきたりだからって、聞き入れてくれなくて~。仕方が無いから、無利子でお借りするって事で、やっと収まったの。‥‥‥全く、香坂さんは義理堅い上に頑固だから困るわ」




困るわ、とか言っているけれど、さして困った様子も感じられない明るい口調で語りまくってるし‥‥‥。



こういうお母さんの態度も、言い訳の仕方も、慣れてはいるけれど‥‥‥今回ばかりは何をどう言い訳されても納得いかない。



「今からでも、会社の融資、受けられないの?‥‥‥私、バイト増やすし、就職したらお母さんにお金、返すから‥‥‥。とにかく、あの家の変なしきたりから逃れる為にも、お金、返したいの、出来るだけ早くっ」




私は、必死に訴えた。

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