3話 母の言い訳
第13話
玄関ドアが閉まる音なんて聞きなれているはずなのに、私はその音と振動にビクリと身体を竦ませた。
それと同時に襲ってきたのは、崩れ落ちるはずも無いアパート1階の床が、一気に崩れたような、変な錯覚。
おぼつかない足取りでベッドまで引き返し、震える手で携帯電話を操作する。
利き手じゃなくたって出来るぐらい単純な操作なのに、手指が思うように動かなくて、自宅の電話番号を画面に表示させるのもやっとの事だった。
何度目かの呼び出しの音が途切れた瞬間、お母さんの声も待たず、私は喋りだしていた。
「お母さんっ、なんでっ!?どうしてっ!?」
ヒステリックな自分の声に触発されて、怒りと不安が臨界点を一気に突破。
両目にブワッと涙がこみ上げる。
「いきなり何?‥‥どうしたの?‥‥‥朋紀くんは、もう来た?」
安穏としたお母さんの問いかけに、私は、すぐさま答える事が出来なかった。
訊ねたい事と言いたい事が、頭の中でせめぎ合っている。
それでも、その中で、最も私を脅かして、最も私にダメージを与えているのは‥‥‥朋紀が最後に言い残した、呪いの言葉‥‥‥。
「大学のお金っ!援助って、何っ?」
「援助?‥‥‥それって、香坂さんの事?‥‥‥朋紀くんったら、そんな事も話したの?」
お母さんは、朋紀がそれを私に話した事に、少し驚いたそぶりだけれど‥‥『援助』という言葉そのものには全然驚いていない。
‥‥‥ってことは‥‥‥アレは、脅しとか、口から出任せとかじゃなく!?
「‥‥‥マジで!?‥‥‥本当に援助、受けてるのっ?」
「うん。援助っていうか、無利子で借りてるけど」
私が半泣き状態で問いかけているというのに、お母さんは『それが何か?』的な口調で、あっさりと肯定した。
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