第12話
「帰ってください。そして、二度と私の前に現れないでください。」
雑誌から目をそらし、静かな怒りをこめて、私は頭を下げた。
私に、こんな露骨な態度をとらせたのは、香坂朋紀、あんたが初めてだ。
「帰るのはいいけど、二度と現れないっていうのは約束できないな。学校と寮に提出した緊急連絡先、瑠羽の携帯の番号で届けてあるし。俺に何かあったら、瑠羽が真っ先に呼び出しされちゃうと思うから」
雑誌をベッドの上に放り投げると、朋紀は立ち上がり、玄関に向かって歩き出した。
「なんで?‥‥どうしてそんな、勝手に‥‥‥っ」
「勝手に、じゃないよ。笠木のおばさんが携帯の番号もアドレスも快く教えてくれたんだから。‥‥‥いつでも頼っていいって」
「し、信じられない‥‥何考えてんの、あの人‥‥‥。」
お人好しのお母さんの笑顔が、頭の中でグルグル回ってる。
今すぐ電話で文句を言わないと、私、本当に、どうにかなってしまいそう‥‥‥。
「形だけとはいえ、守り役を引き受けた責任を感じてくれているんじゃないの?だから、いくら娘に泣きつかれても、守り役を断ったりはしないと思う。というか、心情的に出来ないだろうね」
「心情的‥‥‥?」
玄関で靴を履く朋紀の後姿に、私は問いかけた。
朋紀は振り返って、困ったような笑顔を浮かべ‥‥‥。
「瑠羽の大学入学の費用をうちの親が援助したから断れないだろうな、って事。じゃあ、またね、瑠羽」
そう言い残して、玄関ドアの向こうに姿を消した。
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