第7話
「‥‥‥なんだよ、それ‥‥‥俺の事、聞いてなかったの?」
「やっ、あのっ、お母さんの友達の息子さんだって事は、勿論聞いてますっ」
私は、クッションを構えて即答した。
「そんなレベルかよ。‥‥‥ちゃんと説明しておくって、笠木のおばさん言ってたのに、話が違うじゃん。っていうか、もっとずっと前から言い聞かせてくれていれば良かったんだよな‥‥‥‥」
そう、ぼやいて、すぐ脇のベッドにもたれかかると、彼は苛立たしそうに髪をかきあげた。
私の母の事を、笠木のおばさん、などと親しげに呼んで、尚且つ、責めるとは‥‥‥生意気なっ。
しかも、話が違う、だなんて‥‥‥まるで、うちのお母さんが、私に大事な事を伝え損ねているとでも言わんばかりで‥‥‥。
「他にも聞いてますっ。うちの大学の近くに寮があるって。だから、何かと面倒見てやってくれって、香坂さんの家の方から頼まれたって」
身内が責められて、ちょっと腹が立ったというのもあり、私は、語気を強めて矢継ぎ早に言い放った。
クッションを盾にするように構えたままなので、なんだか負け犬の遠吠えっぽいけれど‥‥私的には精一杯ケンカ腰で言ったつもり。
なのに、彼は、フッ、と鼻でせせら笑っただけ。
「やっぱり、その程度か。‥‥‥瑠羽にとって、悪い話じゃないハズなんだけどな。ああ、それとも、笠木のおばさんは、大した事じゃないって思ってるのかも知れない。確かに、うちの親も、形だけでいいからって、話を持ちかけたみたいだし」
そんな、大した事じゃないって‥‥‥普通、大した事じゃないでしょ?
たまたま、大学の近くに寮があって、困った事があった時に、ちょっと面倒見てあげるぐらい‥‥‥。
それなのに、悪い話じゃない、だなんて‥‥‥私が引き受けた役目とは、まるで次元が違うような‥‥。
そうか‥‥‥。
何かが食い違っていると感じていたのは、コレだ‥‥‥。
彼が私に求めている事と、私が彼に応えようとしている事の、認識のズレ。
「でもね、瑠羽?‥‥‥俺は、形だけだなんて思った事は1度も無いし、これからも思わないよ」
マグカップを口元に運びながら、彼は楽しそうに言葉を紡ぐ。
「きっかけはどうであれ、瑠羽は俺の守り姫なんだから」
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