第3話
「あの、適当に座っててください。今、紅茶、入れますから‥‥‥」
「どうぞ、お構いなく」
香坂少年はフローリングの上に膝をついてから、ミニテーブルの脇の座布団の上に恭しく正座した。
ただでさえ狭い六畳間が、長身の彼の存在で更に狭く感じる。
四畳ほどのダイニングキッチンのスペースがなければ、相当息苦しいことになっていただろう。
生粋のお坊ちゃまは、この圧迫感たっぷりの空間にはそう長くは耐えられまい。
もって十数分か‥‥‥‥まあ、それ以上長居されても、私だって困るけど。
マグカップに紅茶を注ぎながら、つい背後の香坂少年の気配に意識を集中させてしまう。
彼は‥‥‥カッコイイというよりは、繊細で綺麗な顔立ち。
成長期ならではの、中性的な美とでも言えばいいのか‥‥‥。
後、数年もすれば、髭も濃くなったりするだろうし、顔の骨格だってもっと大人びて、少々見た目が良い程度の普通のオニイサンになってしまうかもしれないんだけど‥‥‥。
でも。
チラリと視線を振れば、サラッとした前髪を何気なく掻き上げる香坂少年が、窓から注がれる春の日射しに照らされて、二割増で輝いて見えている。
はっきりいって、香坂少年の見た目は、かなりイケてると思う。
私的には、四つも年下の男の子なんて恋愛対象にはならないけれど、それとこれとは話が別。
綺麗な男の子を鑑賞して目の保養をするのは、悪くない。
初対面の相手と話をするなんて鬱陶しいって思っていたけど、ちょっと得した気分だわね。
「お待たせして、ごめんなさいね」
美少年との思いがけない出会いに、私の顔は自然と微笑みMAXだ。
動機が不謹慎だけど、笑顔で接する事は良好な人間関係を築く上での基本だし、微笑みかけるのは悪いことではないはず。
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