第28話

『俺だって君に時間を使うんだよ。』



「…なにその仕方ないから、みたいな」



『仕方ないよ?だって、もう1人のすももと約束してるんだもん。でもいいや。』



一体、なにがいいんだ。






『俺のこと好きな子が2人もいる空間って、なんかクるものない?』




また言いたい。


…クズすぎる。



彼女は置いておいて、私はその場でどうしろって?



彼の性格上、菅野 すももに行くに決まってる。





『嫌そうな顔してるけど、もうすももに連絡入れちゃった。…楽しみだね。"3人"』








クズ中のクズだ。


もういっそのこと、家にいた方がマシな気がする。




『ほんとに送ってかなくていいの?』


なのに、こういうところはしっかりしているらしい。





「大丈夫。すぐそこのマンショ…ン」



『へぇ、あのマンションね。


何号室?』




しくった。




「…」


『意地でも自分では言わないつもり?


でもまぁ、君のお友達に聞けば一瞬で教えてくれそうだよね。色仕掛け、使えば。』



「…604」



『了解。明日迎えに行くね。』





明日は仕事。


定時にあがれれば、19:00には家にいる。



それを分かっての、言葉なんだろうか。







そして、度々会う柚月には、私の異変はすぐにバレた。



親友にすら、言っていなかった不倫関係も。




『親友としてならやめた方がいいって言えるけど、李になった気分で考えるとさ…』






20歳になったばかりの私達。



お世辞でも顔が良いとは言えるレベルじゃない、私の顔。


連絡先を知っている異性も、朝日さんと家族くらいしかいない私には、元々そんな相手がいるはずがなかった。



高校を卒業してすぐに就職して、仕事場で恋愛、なんてこと考えたこともなかった私が1年後。




朝日さんにそっちを誘われれば、誰だって行くと思う。




…さらに、朝日さんは、社内では結構有名なイケメンだった。


だから私も知っていたし。






『でもさ、なんで菅野くん?』




…それは私だって聞きたい。

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