第21話

3月下旬。



久しぶりに連絡が来たかと思ったら、内容は子供が生まれた、だった。



『しばらくは会えない日が続くけど、…』


「わかってます。」




何処にも行かないで、って言いたいんでしょ。





『そうじゃなくて。


会えない日も僕を想っててほしい。』




…そんな残酷な話、ある?






子供が生まれて、幸せハッピーな彼を見ているのは結構…キツいかもしれない。



今まで毎週のように触れ合っていた肌が今では、一切触れ合わないのも。


20歳の私に、いつになるか分からない日まで待てって…。




そして、人肌が恋しい時に限って、この人は現れた。








『李ちゃんじゃん。』






菅野 類。



今日は1人じゃなかった。


菅野 すももを連れてた。




『すもも悪い、トイレットペーパー買い忘れた。』



…自分で持ってんのに?


そんなのどうって事ないって顔で、彼女はスーパーからの道を戻って行った。




『どう?彼と別れた?』



「…順調ですけど。」



『嘘だ。不幸なオーラ、振り撒いてる。』


「…」




『一度寝た男からのアドバイス。


不倫はやめな?』





「…え」


『いや、気付いてないとでも思った?じゃないと、"あんな嘘"付かないっしょ。』



あんな嘘…。


ピアス。


あの日の晩を思い出すだけで、事の張本人に手を上げたくなる。





『しかもあの人、朝日さん?


昨日ベビーカー押して綺麗な女の人と、今の君とは真逆のオーラぷんぷんだったしね。』



…それが、決定打。




『長く続けてると、戻れなくなるよ。』




もうなってる。









「だったら、あなたが抱いて。」



『…俺らって、ワンナイトラブじゃなかった?』



「やっぱい、」





『いいよ。』



『…おいで。』

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