席に戻った私達には、彼の思い通りであろう沈黙が続いた。

『李？』

「…ん？」

『そんな強ばらないで。』

気にしないで、と言われた。

…気にだってするよ。

今の言動で、絶対私と菅野類の関係は知られた。

朝日さんが、怒っているのが目に見えて分かるんだから。

以前、私が怒らせてしまった時と同じ。

『…李の家、帰ろっか。』

「散らかってるよ？」

『気にしない。』

それからは、散々だった。

限界だと訴えても、やめてくれない朝日さん。

気にしないで、って言葉はやっぱり嘘だった。

最中に彼が吐き出した言葉は『もうあの男と寝ないで。』

…あなたには奥さんがいるのに、私には自分だけにしろ、と言う。

最後の方は、朝日さんが満足して、事が済むのを必死に耐えた。

「…あ…さひさん」

あんなに私を抱いた人は、明け方には姿を消した。

…指輪も忘れて、そんな焦ってたの？

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