第10話

「…そう」



『昔も今も、見て見ぬふりが好きだね。』





"李ちゃん"





名前を呼ばれた瞬間、鳥肌が立った。







柚月を自宅に送って、私もその足で帰ろうと思った。



このまま彼と一緒にいたら、良くない事が起こる気がする。


…ただの勘だけど。




『どこ行くの?俺の車、こっち。』


「…」




誰か、助けて…。










再び車に乗せられた。…無理やり。



「…ねえ、どこ向かってる?」


『すももの家。』



どっちのすももだ?


彼が言うすももがすももなら、助手席のすももか?





「私のお家は…?」



『後回しね。』



菅野 すももの自宅の方が近いと言った彼は、当たり前かのように義妹を先に送り、かつてのクラスメイトだった私を最後に送り…、





「私の家じゃないんだけど。」



『ホテルだね、ここは。』



「…」



扉を強くこじ開けようと試みても、開かない…。





「お願い、…開けてほしい。」



『え〜、どうしよっかなぁ』



「楽しんでないで、開けてってば!」



『い・や・だ。』



「…」



『選んで。』







『このまま俺とスるか、

他の男に食われるか。』

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