第9話

「柚月、出るよ。」



『もう少し〜…っ、え?菅野兄妹?』



学生時代から柚月は2人を個々で呼ぶのが面倒だって、いつもこう呼んでた。



でも、本人の前では名前だったじゃん。



…呑みすぎた?





『2人とも送ってくから、今から言う駐車場に降りてきて。』



車持ち…、持っているだろうとは思ってたけど。


しかも女3人乗っけてくとか。




"2人とも"


って言った理由は、まだ2人は一緒に暮らしてるから?



かつてのクラスメイトのように、彼らを色眼鏡で見ているのは私も同じ。


人気者の話題は、好きでなくても少なからず気にはなるから。





駐車場に到着して、女3人で後部座席に入ろうとした。


余裕で座れるくらい、大きいから。





『すももはここ来て。』



あぁ…、私じゃないって頭では分かってんのに。


思わず反応してしまう。




無意識に溜息ついてると、ミラー越しに運転席の彼が私を見て笑ってるのが見えた。




悔しくてまた、顔を歪めた。




既にイラついてるのに彼は、余計なことをさらりと聞いてくるから。



『ね、俺らと同じクラスだったことあった?』



「…はい?」



あぁ、そういや私の存在、知らなかったもんねっ?


仕方ないよねっ?





「1年の時。」



『そっかそっか。』



…聞いてきて、なんだ。





『俺さ、何回か君を見かけたこと、あるんだよね。』



へえ。


それもきっと、違う人なんでしょ。









『すももがやられてた場所で。』

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