第10話

「ぜーんぶ七瀬が悪かったけどね。」


「そんなことないだろ。」



って笑って言う七瀬とお店を出た。


先に出た彼女達2人とは分かれて。





「次のとこ、あまり頑張りすぎんなよ。」


「…多分、大丈夫だよ。」



"多分"を付けた理由は、わざと。


今まで当たり前のように隣にいた七瀬がいない職場で喪失感を感じるのが少し怖い。



「まぁ、そんな離れてねえし大丈夫だろ。俺ら。」


「俺らってなに。」



「友達みたいな?同期みたいな?

いや、家族みたいな、が1番合ってるか。」



七瀬が言っているのはきっと、"友達以上 恋人未満"。





でも、異動したら七瀬と彼女のことを気にすることもなくなるし、良いのかも。








な、はずだったのになんで。


異動1週間前に私達3人で飲みに来てるの?




さっきからいくら考えても頭空っぽ。





「存分に飲んでね。私の奢りだから!」


明日は土曜日だから、と七瀬から誘いが来たと思ったら、彼女がいた。




珍しいと思ったんだよね。


七瀬が私を誘うなんてさ。





しばらくしてみんなの酔いが回ってきた頃。



「そういえばこの前七瀬くんとご飯行った時ね、この間話題に出た元カノさんと会ったの。」


「えっ?」



「凄く可愛かった。」




小柄でね、なんて酔った勢いで止まることを知らない坂井さんは七瀬が止めても話し続けた。





「もういいっす、その話は。」


「でもあの子はまだ、」



「それ以上は俺も怒りますよ。」




ごめんなさい〜と、悪気の無さそうな声色。


…酔ってるもんな。




それにしても、"あの子はまだ"とは??








「…なんだよ。」



「いいや、何も?私は根掘り葉掘り聞こうと思ってないし。」



「そのニヤけた顔が聞きたがってんじゃねえかよ。」





…少し、聞きたいかも。

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