未定

第9話

「隣を空けていたのは七瀬さんが座ると思ったからですか？」

突然現れて肩が上がった。

また、冴木さん。

また、七瀬の話。

けど、今日は何だか様子が違った。

「いいな、七瀬さんと同期で。そしたら私だって…」

「冴木さん？何度も言ってるんだけど」

「これ以上変な噂が立ってて大丈夫ですか？

朝日奈さん、七瀬さんに色目使ってるとか毎日のように飲み会に誘ってるなんて噂が出回ってますよ。

私後輩として、心配で。」

「…大丈夫よ。七瀬との距離が近かったのは事実だし、自分の事は自分で何とか、」

「俺の話なら俺にも話すべきじゃないかって思うんだけど、違う？

冴木さん。」

「七瀬？」

「…」

しまった、そんな表情を彼女はしていたと思う。

「少なからず噂は立ってるかもしんないけど、そんな心配いらないから大丈夫だよ。

こいつが言った通り、俺らのことは俺らが何とかするから。」

「…」

「2年目で秘書候補とか言われてるくらい頑張ってるからさ、あまりいじめないでやって。」

「……す…いませ、」

逃げるように去って行った彼女。

翌日、冴木さんにはこれでもかって程、謝罪をされた。

「女同士のいざこざってやっぱ男が入った方が綺麗に解決すること多いよな。」

時たまにそれが悪化する事もあるけど。

「てか、私達ってそんな噂されてる？」

「……まあ、それは俺の方が原因作ってるかも。」

「どういうこと？」

「色んな人にお前のこと、よく褒めてるからさ。

あの子に言ったようなことを。」

大いに七瀬が悪かったけど。

少しだけ、心が弾んだ。