第8話
「朝日奈さんって、七瀬さんと同期なんですよね。」
見た目も性格も大人しくて、この日まで仕事以外の話は私から聞いても曖昧な返答ばかりだったのに。
何故かこの日だけ、七瀬と私の関係について詳しく聞かれた。
「そうだけど、どうしたの?」
「付き合ってるんですか?」
「…全然。ないよ。」
「でも七瀬さんとの距離感が他の人よりも近すぎるって、私達同期の中でも結構話題です。」
「それは七瀬と私ってお互い気を使わずに会話してるからだと思うんだけど、確かに男女でそういうのあまりないよね。」
どの環境であっても男女の関係って、みんな敏感になる。
その相手が七瀬なら、より。
「実際、朝日奈さんの七瀬さんへの態度も他の人とは違いますからね。」
「え?」
「でも分かります。仕事も出来て、同期や後輩のフォローだけじゃなく先輩へのフォローも出来て、顔も性格も良い人が身近にいたら、そりゃ…」
「
私と七瀬は本当に同期なだけだから。」
「本当に冴木さんの思ってるようなこと、私達にはないよ。」
しっかり伝えても、彼女には聞こえていなかった。
次の日も、その次の日も彼女は私と七瀬のあらゆる噂や同期の中でこう言われている、など沢山私に不満を漏らすようになった。
だから少しの間だけ、事が収まるまで七瀬と仕事以外で距離を置いた。
「朝日奈、生2つと…」
彼女との関係に変化があってから、異動が決まった先輩の送別会があった。
このチリチリ頭め、また私にって思ったのに。
「貸して、俺が頼む。お前は?」
残業で遅れた七瀬が私の隣に座った。
「レモンサワーを、お願い。」
最近まともに話してなかったからぎこちなくなっちゃう。
「ちょっとお手荒い。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます