第6話 違和感

シンとフレアは、異世界で初めて訪れる集落に足を踏み入れた。周囲を見渡すと、通りを歩くのはどこもかしこも男性ばかりで、女性の姿がまったく見当たらないことに気づく。シンは一瞬、不安を覚えたが、その思いを振り払うようにして、前方の中年の男に歩み寄った。


「すみません、この辺りに服屋はありますか?」シンは礼儀正しく声をかけた。

中年の男は笑顔を浮かべながら、シンに道を教えてくれたが、ふとフレアの姿に気づくと、表情が変わった。男は少し不思議そうにシンとフレアを交互に見つめた後、首をかしげながら尋ねた。


「おい、あんた、この女にそんな良い服を着せてるのか?よほど裕福なんだろうな」

男は嘲笑するような声色でそう言うと、フレアを頭の先から足の先まで見渡し、ニヤリと笑った。


シンは一瞬、男の言葉の意図が分からず眉をひそめたが、すぐに彼がフレアを侮辱するような態度を取っていることに気づいた。「いや、違う。彼女は俺のパートナーだ。俺と対等な仲間だよ」シンは毅然とした声で答えた。


すると男の顔は途端に険しいものになり、鼻で笑うようにして答えた。「はっ、パートナーだと?あんた、正気か?女が男と同等になれるわけがないだろうに」

男の言葉は嘲りに満ちていて、その無神経さにシンの胸には怒りが湧き上がった。フレアもまた男の言葉に不快感を露わにし、じっと睨みつけた。


「これが調整者の言ってた…マジ気分悪いな」シンは心の中で怒りを抑えながら、調整者が言っていた言葉を思い出していた。女性たちが不当に虐げられている世界だという話を聞いた時には、半信半疑だったが、いざ現実に目の当たりにすると、それがいかにひどいことかが改めて痛感された。


「裕福だなんてとんでもない。彼女は俺にとって、大切な仲間なんだ」シンは強い口調で言い放ち、男の発言に対する反論を試みたが、男はまったく取り合う様子がなかった。むしろその態度を見て、いかに彼が異常な価値観を持っているかを示すかのように顔を歪めた。


男はシンの言葉を聞くと、軽蔑の目で二人を見やり、「好きにしな。女を崇め立てるのも勝手だが、どうせ意味なんてないさ」と言い捨て、歩き去っていった。シンとフレアはその場に立ち尽くし、男の背中が見えなくなるまで無言で見送った。


「シン、あいつら全員こんな感じなの?」フレアが少し憤りを隠せずに尋ねると、シンは無言で頷いた。フレアがどれだけ強くても、どれだけ頼れる存在であっても、この世界の価値観はそれを認めようとはしない。シンは改めて、この異世界で彼らが果たすべき役割の重さを感じた。調整者が言ったように、この世界の秩序を正すことは、思っていた以上に困難なことかもしれないと悟る瞬間だった。


「行こう。まずは服を手に入れて、このイカれた世界のことを知る必要があるみたいだ」

シンはフレアにそう言い、二人は少し厳しい現実を抱えながらも、集落の中へと歩みを進めた。この世界での冒険は、想像していた以上に困難で、そして意味のあるものになりそうだと彼は心の中で感じていた。

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紳士の天使達 @zurui

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