第3話 天使。大地に立つ。

シンは調整者に新しい力を与えられ、異世界への転生が目前に迫っている。彼の心は高鳴り、興奮が抑えきれなかった。調整者が彼を見つめ、静かに励ましの言葉をかける。


「シン、君が異世界で果たす役割は大きい。君の仲間たちの力を信じ、冒険を楽しんでほしい。」

その言葉にシンは勇気をもらい、思わず拳を握りしめた。目の前の強烈な光がだんだんと彼を包み込み、全身がその光の中に吸い込まれていく。


「おう、ありがとうよ!めちゃくちゃやってくるから、見ててくれ!」

シンはガッツポーズを決め、満面の笑みを浮かべた。次第に意識が遠のき、光の中に飲み込まれていく。


やがて、シンは新たな異世界に降り立った。目を開けると、透き通る青空と広がる緑の大地が目に飛び込んできた。柔らかい草の上に仰向けに倒れており、全身を心地よい風が包んでいる。彼は少し起き上がり、周囲を見回した。


「うーん…、ここが異世界か…。」

シンが呟いた時、ふと視界に見慣れた金髪が映った。そこには小柄で可愛らしい姿をした女性が立っていた。日焼けした肌にチアリーダーの衣装を身にまとい、少しきつい目つきでこちらを見つめている――フレアだ。彼の仲間の一人で、最初に作り上げた天使だ。


「やっと起きたかよ。ボケっとしてんじゃないわよ!」

フレアが自然に話しかけてきたその瞬間、シンの心は熱くなった。ゲームの中ではただの定型文でしか話せなかった彼女が、今は自分の言葉で語りかけてきている。

彼はフレアに駆け寄り、感動に浸りながら声をかけた。

「フレアちゃんが喋れるなんて、もう最高だよ!ごめんね呼び出しちゃって。あのゲームのことを覚えてる?」


フレアは軽く腕を組み、少し考え込むように顔をしかめた。

「ゲーム…ああ、確かに覚えてるわ。あんたが俺に名前つけてくれたし、私たちが戦いに出るたびに必死で守ってくれたことも。」

彼女はシンの方を見つめ、まるで思い出を語るように話し始めた。その言葉を聞いて、シンは驚きの表情を浮かべる。どうやら彼女はゲーム内の出来事を鮮明に覚えているらしい。


「本当に覚えてるんだな!じゃあ、オレが前衛で突っ走って、フレアちゃんがいつも後ろから可愛く応援してくれた事も覚えてるってこと?」

シンは笑いながら尋ねると、フレアは少し不満げな顔をして答えた。


「バカ!!あんたは恥ずかしい事を軽々とっ!!

フンっ。まあね。あんたがいつも無茶ばかりするから、何度ひやひやしたことか。

でも、ちゃんと支えてくれてたことには感謝してるんだから。」

彼女の返事にシンはほっとしながらも、もうひとつ気になっていることを口にした。


「それでさ、フレアちゃん。君は自分が何者かって分かってるのか?つまり、オレが作ったNPCってこと…それも覚えてる?」

シンは少し緊張しながら尋ねた。彼女がどんな答えをするのかが気になっていたのだ。


フレアは一瞬、目を伏せるようにして考え込み、再びシンを見つめ返した。

「そうね。自分があんたの手で作られたってことは覚えてる。でも、今はこうして自分の意思で話してるわ。あんたが作ったってだけじゃなくて、今の俺は自分自身としてここにいるの。」

その言葉にシンは感動し、彼女の肩に手を置いて微笑んだ。


「そっか…お前がオレの作った存在でも、今はちゃんとここで一緒に生きてるんだな。」

シンは彼女が単なるプログラムではなく、一人の仲間として隣に立ってくれていることに深い感動を覚えた。彼女の言葉で、自分がこの異世界でなすべきことがより明確に感じられるようになった。

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