人返し令(前)

第15話

いつの時代も失政をする政治家はいるもので、その一人が幕末の老中、水野忠邦です。1837年、彼は「人返し令」を発令します。

これは人口が増えた江戸から、人手不足の田舎に人を返し、農漁業にあたらせようとしたのです。

しかしこの政策は大失敗しました。理由はこうです。

・農漁業は商工業のように自分で価格を決めて生産物を販売することができない

・農漁業は生産高の減衰が激しい→安定した収入を得ることができない。

・もともと不作や現金収入が少ないので、生活に困窮した農民が江戸へ出てきて

それが江戸の商工業を支えた→江戸の商工業の衰退。

・その結果、デフレが起こり、水野忠邦は「天保銭」という粗製乱造の通貨を

大量に発行したため、物価が上がりさらに民衆は苦しんだ。

(「天保銭」は、額面では100文であったが、実際の価値は80文程度

これは品位の低い銅を使って大量に製造したうえ、各藩で贋金作りが横行し

(寛永通宝6枚があれば、天保銭1枚=80文ができたので、全国で贋金が横行し

幕府の発行記録が4億枚弱なのに対し、明治政府が回収した天保銭は6億枚弱であったので

贋金は少なくとも2億枚以上もあったことになる)

後に明治政府に一枚8厘で買い取られることになり、100文にも1銭にも足りなかったことから

昭和の初めに至るまで頭の足りない人を「天保銭」とやゆしていました。

もっとも今の政治家は「天保銭」どころじゃありませんが)

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