26.バナナのたたき売り

第26話

バナナを食べながらでじこが言った。

「面白い売り方だにょ」

「昔はどこでもあった売り方だったのだが・・・」

すると叩き売りのおじさんがやってきた。

「懐かしかったねえ、あの頃は」

「昔からやっていたんですか?」

「うん、今からおよそ100年前、台湾から大量のバナナがこの門司の港に陸揚げされたが、当時は輸送中にバナナが蒸れて熟れてしまって売り物にならないものも多かったんだ。そこで門司の商人たちが考え出したのが「バナナの叩き売り」だったんだ。

船から降ろしたバナナをその場で売りさばいてしまおうというわけだ。栄養満点のバナナを安く大量に買えるから叩き売りは大繁盛したんだ。」

「あのころの門司港はそりゃ活気があってにぎやかだったねえ」

「アキハバラの空襲に始まり、今は日本もこの有様だ」

「なんとかならんのかねえ・・・」

その時筋の通った声が響いた。

「こら!平田!」

聞き覚えのある声である、南風泊市場の尾崎先生である。

「わしはお前に教えたこと忘れているわけじゃないだろう!35年前、東京湾に浮かぶ船の上でわしはなんと言ったか覚えているか?」

そういうと尾崎先生は一枚の旗を取り出した。

「これを忘れたとは言わせん!」

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