20.やってきた二人

第20話

「しかし、なんでここにきたにょ?」

「魚を追ってきたというなら不思議じゃない」

「え?」

「この神戸は海の幸が豊富な町だからね」

「そうなのかにょ?でもおまえらは足手まといになるだけにょ。でじこたちは今から独裁者を倒しに行くんだにょ」

その時平田先生はみけの目を見た。

「でじこちゃん、この子は使えそうだ」

「みけは使えてもりんなは寝てばかりで役立たずにょ」

「そういえばケーキ屋の娘といったね」

「はいみゅ」

そういうとりんなはケーキを差し出した。

「ほう、これはおいしいな」

「寝てばかりだけれど、りんなのケーキはおいしいにょ」

「それならしばらくこの町で修行したらいい。神戸の町は南は大貿易港でケーキに必要な小麦粉はいっぱい入ってくる。特にコーヒーはいくらでも入ってくる。

町の北側には牧場と果樹園があり、フルーツ、乳製品、リキュールが手に入る。

ケーキ作りにこれ以上適した土地は他にない」

その時一人の若者が入ってきた。

「先生、えろうすんまへん。焼き上がりが遅れましてん」

「生田君!おそいぞ!」

するとりんなは立ち上がった。

「先生のパティシエみゅ?」

「紹介しよう!私の教え子で全国パティシエコンテスト優勝の生田守君だ!

三宮で「ラ・ピュセル」という店を経営している」

「ほえー、さすがは平田先生にょ。教え子もすごいにょ」

「生田君、ものは相談だが、しばらくこの子を預かってくれんか?」

「先生の頼みなら断れへんけど、何か事情があるんか?」

「この子はパティシエとしては優秀な才能を持っている。疑うならこの子が作ったケーキを食べてみるかね?」

「疑いはしまへんけど、これ・・・」

生田はりんなのケーキを食べた瞬間、驚きの声を上げた。

「これ、あんたがこしらえたのか?」

「はいですみゅ?」

「これは将来が楽しみやな!」

「だろう、生田君ほど優秀な人のもとでそだてればすごい人材になるぞ!」

「わかりました!これはほおっておけまへん!」

りんなはすぐ寝てしまった。

「りんなはすぐ寝てしまうにょ」

「生田君、君もパティシエなら分かるだろう。ケーキを作るのにどれだけ体力がいるか。ましてやこの子はこんなに小さい女の子だ。眠たくなるのは無理もない。無理に起こさず長い眼で見てやれ」

「わかりました。お預かりします」

「りんながすぐ寝るのはそういうわけだったのかにょ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る