11.上本町の伝説
第11話
「この上本町には古くから伝わる伝説があってな、およそ200年前、太田南畝という人がこの町を訪れたとき、「鶴の橋の西方、千日前を夜更けに歩くと南に大きな星が四つあり、十字を形成す。この星が出たる時は翌日、白い虹が日を貫く、世が変わるなり」
と書き残している。大阪の人たちはこれを「上本町の南十字星」と呼んで親しんでいる。」
まさかとうさだは笑った。
「日本で南十字星が見えるわけがないでしょう」
「そうゲマ」
すると。でじこは2人を制した
「うさだ、ゲマ、でじこが今の言葉言ったならいくらでも笑うがいいにょ、でも、この人はだれにょ。」
「東大教授の平田先生じゃない」
「そんな偉い先生がうそをでじこたちにいうはずがないにょ!」
「上本町で南十字星と白い虹が見えたという記述は古文書にたびたびでてくる。最も古い記述は天保8年(1837)2月16日から18日にかけて見えたという記録がある。
この翌日、大阪町奉行所与力・大塩平八郎が大阪天満にて一揆を起こした。「大塩平八郎の乱」である」
「それで世の中は変わったのかにゅ?」
「残念ながらすぐには変わらなかった。しかし大塩平八郎の乱の影響は強くたちまち日本全国で一揆が続発し、そのまま明治維新まで物語がつながっていく。実際、乱からちょうど30年後にもまたもや南十字星が上本町に現れたという記録がある。その翌年に明治維新が起こり、ようやく世の中が変わったのだよ」
「一度南十字星が上本町に現れると世の中が乱れるにゅ」
「そしてもう一度現れると世の中が変わるというわけね」
「これと同じ例がもう一つある、昭和11年2月下旬にまたも南十字星が上本町に現れた。この年の2月26日に「2・26事件」が起こっている。日本は戦争に巻き込まれていく。そして9年後の昭和20年8月13日にも上本町で南十字星が見えた。翌日には白い虹が太陽を貫いたという」
「その翌日って、終戦記念日じゃない」
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