10.上本町の南十字星

第10話

午後2時発の近鉄アーバンライナーで大阪へ向かった。

「新幹線で行くかと思ってた」

「大阪へ行くならこの方が早いしおもしろい」

「それだけじゃないにゅ」

「ゲーマーズでのサイン会やコリアタウンへ行くにも都合がいい。そのために産業技術記念館を回ったのだ」

平田先生の手には産業技術記念館で買ったお土産がいくつかあった。

「それはなんだにょ?」

「お土産用の「トヨタカレー」だよ。産業技術記念館ではレトルトカレーが名物でな」

意外なようだが、産業技術記念館ではお土産用のレトルトカレーが大人気なのだ。

箱になっていて電子レンジでそのまま温められるだけではなく、味も普通のレトルトカレーに比べて格段においしく、なんといっても「トヨタ」のネームバリューがある。だからリピーターも多かった。


鶴橋の駅を下りるとすぐにコリアタウンがある。

「オモニさん」

「おや、平田先生、いらっしゃい」

「ちょっと聞きたいことがあるんだが」


「そうかい、とうとうやりはじめたかい。やると思ってたけどね」

「それでこの子たちは店を失ったから連れてきたんだ」

「気の毒に、でも何もうわさはないけど」

「そうか」

「先生、今年はいいものができたから少し持っていってよ」

「わざわざすみませんね」

「先生、あれはなんなの?」

「コリアタウンの理事長さんだ、女将さんと言う意味の「オモニさん」と呼んでいる」

やがてオモニさんはつぼを持ってきた。

「あんたたち店を失って大変でしょう。元気だしなよ!」

「なんだにょ?」

「キムチという辛い漬物だ。ぷちこちゃんならあうかも知れん」

やがてサイン会を終え、その日の宿はコリアタウンとゲーマーズ大阪店のちょうど中間の上本町に泊まることになった。

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