9.謎のビニロン

第9話

次の日、でじこたちは名古屋駅近くにある産業技術記念館へ向かった。

産業技術記念館、名前だけではイメージしにくいが、かつてこの地には「豊田自動織機製作所」があった。発明王・豊田佐吉の自動織機の発祥地である。

博物館はその工場の建屋をそのまま利用し、中が大きく2つに分かれていた。

一つは自動織機を中心とした「繊維機械館」、そしてもう一つはトヨタといえばやっぱり自動車、「自動車館」である。平田先生はぷちこの拾った布切れの調査にここを選んだのは繊維についての資料がそろっていたからであった。

「うるさい博物館だにょ」

「この博物館の特徴は古いものをそのまま展示するだけではなく、それらを実際に動かして見せることだ。60年前の機械や自動車が今でも元気に動いている」


見学を一通り終え、でじこたちは事務所を訪ねた。

「ぷちこちゃんの拾った布、ビニロンということだが・・・」

「間違いない、しかも簡単に破れるところを見ると、少なくとも日本製ではない」

「やはり」

「しかもこれは作り方がいい加減すぎる。北朝鮮の布と見て間違いない」

「ビニロンとはなんだにょ?」

「ビニロンとは65年ほど前ビニールから開発された人工繊維だ。日本では服よりもビニールハウスなどの産業用資材や、服の場合は消防士や特殊作業の作業服などに使われている。但しそれ以外に利用法がないのも事実だ。歴史の古い時代遅れの繊維でな、安価に大量に製造できるのも特徴だ。ただしそれだけ破れやすい」

「ビニールではな・・・」

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