105.光の宇宙船

第105話

2002年10月11日、名古屋栄に新しい公園が開園した。「オアシス21」である。

これは元はNHKビルと県立美術館が一体化した建物だったが、老朽化と再開発によりそれぞれが独立した新しいビルへと移転した。その家庭で古くなった土地の一部が残り、臨時的に公園や劇団四季の仮劇場などに使われてきた。

劇団四季の常設劇場が伏見にできてからはいよいよ恒久的な公園の建設が始まった。新しい公園は二階に船の形をしたガラスの休憩所が設けられて

その上には水をはって池が作られていた。

下から見るとまるでさざ波のように見えた。これが湖の代わりとなり夜には光に照らされてきれいだった。人々はこれを「光の宇宙船」と呼んだ。

私はこれで名古屋は終わりだと感じた。と、いうのは屋上に水を張って見世物にした例は多いが、ろくな末路ではなかったからだ。

江戸時代、大阪の豪商淀屋辰五郎は天井にガラスの水槽を作り寝ながら金魚を眺めて暮らしたと言う。しかし彼は間もなく幕府に全財産を没収されて大阪を追放された。これを見た紀伊国屋文左衛門は作りかけの水槽の工事をやめた。

以来、天井に水槽を作り下から眺める構造の水槽を作ったものは例外なく破綻している。名古屋市もそうなるだろう。

また湖の下にはバスターミナルが設けられて名古屋市内各地から果ては東京駅行きまでのバスが一つにまとまって出発した。その下にはいろいろな施設がありまさに1968年に総工費85億円の巨費を投じて完成当時は東洋最大規模のバスターミナルといわれた名鉄バスセンターをしのぐ規模であった。

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