97.コミティアとHCJB放送局(後)

第97話

アンデス山脈の高地という条件を生かして弱いNHKの電波を受信して

南米各地に再放送していた。NHK「ラジオジャパン」はラジオの国際部門としては世界の放送局に大きく立ち遅れていた。南米はおろか1980年代まで

アジアでもNHKのラジオが聞けないことはしばしばだった。

やっと1986年にNHKは世界各地に中継局を作り出し世界各地での

受信状況が改善したが、すでに世の中は別の方向へ動きつつあった。

衛星放送やインターネットの登場でラジオは時代遅れになりつつあった。

ラジオには「インターバル・シグナル」というその放送局を特定する音楽がある。有名なのはラジオ・オーストラリアの「ワルティング・マチルダ」や

北海道放送の「ユーカラ」である。

NHKとHCJB放送局は共に「さくらさくら」を使用していた。

ラジオと同人誌に多大な影響を与えたのは1995年の「WINDOWS 95」

である。素人でも買ってすぐコンピューターが使え、インターネット時代の

幕開けを告げた。この時点で古い時代の同人誌とラジオはその役割を終えた。

それまでは自己満足でやっていれば許された。

しかし、これからは自分の作品をわずかな費用で世界に紹介することが可能になった。放送局も電波の状態を気にせずに放送を行えるようになった。

そのためHCJB放送は20世紀をもってその放送を終了した。

しかし、放送はインターネットや衛星放送に移行して続けられた。

同人誌はホームページに移行したりCDROMを作っていた。

それまでは会員制の同人誌がお金を取って作品を載せていたが、インターネットになるとわずかな費用で自分の思うように作品を紹介できるために会員制同人誌は廃れていった。同様にインターネット放送局は各地に広がり、人気を獲得していった。

もはや自己満足や理念で放送や同人誌など文化を発信する時代ではなくなった。

いかに人に注目してもらえるかが重要になったのである。

ところが、それを理解していないでいつまでも自分のやり方に固執する人がいた。こういう人や放送局は例外なく滅びへの道をたどる。

なぜなら、自分の心のうちを思うまま告白しただけでは人々に感動を起こさせることはできないからだ。

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