96.コミティアとHCJB放送局(前)

第96話

こうして私の本は2002年5月に東京と大阪の「コミティア」という

同人誌展示即売会に出品することになった。

それぞれ年に2~3回開かれ今回で東京は60回、大阪は20回を数える

オリジナルしか受け付けない名門即売会だ。

即売会は誰でも参加できるというものではない。

本の審査、さらには抽選もあり参加するのは至難の業だ。

当選落選とまるで選挙の開票速報さながらだった。

普通なら神社へ願掛けに行くところだが、私が願掛けに行ったのは

産業技術記念館だ。ここへ行けば豊田喜一郎さんがなにかを教えてくれる

気がしたからだ。

私はトヨタ生産方式の方法を同人誌に応用したから、トヨタの車作りも同人誌の製作もものつくりでは同じだと考えていた。

コミティアの当選通知を受け取った後に走ったのも産業技術記念館だった。

そのため、即売会の会場内では産業技術記念館のタペストリーを掲げて

トヨタをイメージしたスペースにした。東京、大阪では真似ができないからだ。

しかもこのタペストリーこそ産業技術記念館内の豊田自動織機で織り上げた

由緒あるジャガード織でデザインは産業技術記念館の全景である。

トヨタは原綿さえ輸入できれば布ができるまで自社でやれる。

そして東京コミティアの最中にエクアドルからプレゼントがとどいた。

南米には多くの日本人が住んでいるが、大晦日の紅白歌合戦はかつてNHKが南米向けにレコードを配布していた。衛星放送がない時代南米でNHKラジオを聞くのは至難の業だった。

そこで登場したのがエクアドルのHCJB放送局である。

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