87.ミヤコ蝶々の町おこし
第87話
名古屋・大須。東京浅草や秋葉原にも劣らないこの町はかつてはものすごい賑わいだったという。町のあちこちで威勢のいい言葉が響き、大衆芸能が繰り広げられ、休日は終日にぎわったという。
近年、大衆芸能の没落により、大須の町はかつての賑わいが無くなった。
その有様を見た大衆芸能の大物、ミヤコ蝶々さんはつぶやいたという。
「大須の町が寂しゅうなってもうた。観音様の町が寂れるのはつらいんですわ。あれどないにもなりませんの?」
「ミヤコ蝶々が無料で出演したらいいですよ」
当時、大衆芸能の劇場「大須演芸場」が経営不振に陥り、競売にかけられるところまで経営は悪化していた。
ミヤコ蝶々さんは修行時代、大須で暮らしたことがあったという。
大須は観音様を中心に、現在でも電気街に混じって若手芸人たちが暮らしている。
ミヤコ蝶々さんは年一回ノーギャラで大須の舞台に立ち、多くの観客を迎えた。
およそ10年間この興行は続き、蝶々さんをしたって多くの大物芸能人たちが舞台に立った。
だが、先年蝶々さんが亡くなると,とたんに大須には不況の波が襲ってきた。
店舗の閉鎖、改築が相次ぎ、2年もたたないうちに町は下町情緒が消えてしまった。
「大須演芸場」は瞬く間に経営が悪化し、持ち主が次々変わった上、最後には元の持ち主が破産し担保として演芸場を所得した金融会社が経営破たんし
演芸場は競売にかけられることになった。こんないきさつがあったから演芸場は入札方式では誰も買い手が無く、それから半年たって芝居好きの実業家が
裁判所に申し出てやっと買い取ったほどである。
大須の町では現在もミヤコ蝶々さんのポスターや梅沢冨美男さんなど多くの大衆芸能の役者のポスターが貼られ、町のあちこちで大道芸が催されている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます