80.簡単便利がいい事だろうか?

第80話

誰でもすぐその日から始められるのはいいことだが、それが果たして漫画の世界、ひいては日本のためになっているだろうか?

ただ買って読んでいるだけなら切手や絵葉書となんら変わることがないからいいだろう。しかし人間の欲望は限りがないものでやがては自分でも作りたいと思ってくる。だが、確固たる知識と経験がないままでいきなりそうするのは危険だ。

今のままでは同人誌は質の低下を招き、やがてそれが商業誌にも波及していき

アメリカ、韓国、その他の国からの漫画の輸入を許し、その結果日本の同人誌は衰退してしまうだろう。小規模でも生き残れるだけいい、日本でできた産業が外国からの輸入を許すと言うのは大変恐ろしいことなのだ。特に何かを創造する分野では日本でできるものは原料や半製品を除いて絶対に輸入を許してはならない。

人々から創造や手で物を作ることを取り上げてしまったら、人間はその価値を失ってしまうからだ。人類は自らの手で道具や加工品を作り、文明を築いてきた。機械で大量生産する世の中になっても、最終仕上げ工程やその機械を作る工程も結局人手に頼っている。

人類の歴史は常に変化の連続だった。その変化が止まってしまえばもはや歴史は止まり、人類の歩みも止まってしまう。そして行き着く先は人類滅亡だ。

これは核兵器より恐ろしい。核戦争なら止める術もあれば、少ないながらも生き延びることも可能だが、人類の歩みが止まってしまえば、止める術もなければ確実に滅びてしまう。

私は同人誌の質を何らかの確固たる制度で維持すべき時代は確実に来ると思っているが、同時にそれは私が望んでいることでもある。

100年前までは日本という国は世界で小国だった。しかし今や世界の至る所で日本製の自動車や電化製品を目にすることができる。日本という国の名を知らぬものはいない。外国で優れた日本製品を見る時、日本人としてこれほど誇り高いことは無い。

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