67.庶民の学問

第67話

こうした例は数学でもいえた。現在熱田神宮に残る「算額」は江戸時代に

名も無き民衆が自分の数学の成果を記念して、問題と解き方を奉納したもので

ある。

しかし、その問題は現在高校で教えられる幾何学や微積分の要素すら含んでいる。現在では専門家でなければとても解ける代物ではない。

すなわち、日本には発展、工夫に適した土壌が十分あったのである。

豊田佐吉、喜一郎親子の発明もその土台の上にあるのである。

そして、現在の日本の繁栄もすべてそうした先人たちの犠牲と努力の上に

あって、そこで私たちが暮らしている。

ところが、19世紀までは白人が優位なのが当たり前という考え方になっていった。後にヒトラーがこの思想を受け継いでナチスを作るのだ。

が、これを打ち破ったのが日本人なのである。

フォードに代表される自動車は、有色人種では作れないものだろうとさえ

考えられていたものを、アジアで最初に自力で開発したのはトヨタだった。

トヨタは技術面において工業界での白人優位の神話を根底からくつがえした。

同じ頃、太平洋戦争が起き、日本軍はわずか半月で東南アジアの欧米軍を

次々と降伏させていた。このパワーに世界中が驚いた。欧米人は自信を喪失し、

アジア人は自信を取り戻した。その影には、トヨタ、日産、チッソ、理研、

森・昭和電工グループなど数々の新興財閥の力があった。しかもその多くは

首脳が技術者出身だったことである。今で言うベンチャーだ。

今では悪名高い「タリバン」でさえトヨタの車を使用し、中近東では

敵味方、民族を問わず電化製品と自動車は日本製品を使っている。

それほど日本という国の製品は世界の信用を得ているのだ。

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