64.海との戦い、オランダの挑戦

第64話

風車とチューリップが風にそよぐ平和の国、オランダ。

だが、この国は人類の代表として大いなる海と戦ってきた。

国土の4分の一は海より低い国。ゆえにこの国の正式名称は

「海よりも低い国」という意味の「ネーデルランド」となっている。

オランダは700年も前から、干拓という方法で海と戦ってきた。

人々は海草と泥を混ぜた堤防で家を守ってきたが、洪水、塩害、干ばつに苦しめられた。

20世紀に入り、一人の男が誰も考えなかった計画を提案した。

その男の名はレリー、後に「オランダ干拓の父」と呼ばれることになる人である。

レリーの計画は、当時、「バッデン海」と呼ばれた内海を締め切り堤防で

仕切って淡水湖「アイセル湖」とし、その南部を干拓し、湖水は

灌漑用水に使う計画だった。

こうして1936年、アイセル湖計画による締め切り堤防工事が始まった。

レリーは先頭に立ってアイセル湖計画完成に全力を尽くしたが、

完成を前にして病気で倒れ、この世を去った。

アイセル湖自体が、オランダの国土の1割以上を占めるため、これにかけた

オランダ政府の執念も相当なものだった。

そして戦後になって、レリーの計画は完成した。

現在日本人が知っている風車とチューリップはほとんどがこのアイセル湖の

景色である。

そして、オランダでは今なお海岸沿いで高潮を防ぐ工事が行われている。

700年も続いた海との戦いは今なお終わっていないのだ。

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