63.南十字星の見える街目指して

第63話

私が一番好きな舞台は「佐渡島他吉の生涯」という劇だ。

古くは森繁久弥さん、現在では北大路欣也さんの当たり役だ。

日露戦争のとき、まだアメリカ領だったフィリピンでマニラからケソンへ向かう「ベンゲット道路」を作るために従事していた佐渡島他吉は指揮者とけんかして大阪に強制送還される。それから他吉は人力車を引いて生活する。やがて他吉に娘が生まれ、婿をとるが、火事で婿の店が焼けて財産を失う、孫娘もできるが、すでに時は昭和の代。さらに空襲が始まり、終戦の年の冬に他吉は孫娘の嫁入りを目前にしてこの世を去るところまでを物語で演じる。

この物語は、大阪の上本町近くの路地が舞台だ。

全編大阪弁で演じられるが、とても涙なしでは見れる物語ではない。

歴史もそういうものなのだろう。

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