62.同人誌の世界(後)

第62話

いずれ、多くの産業がそうであったように、同人誌の世界でも産業空洞化、

市場開放、構造改革、国際化などの問題が起こるだろう。

同人誌の世界にもいずれこうした問題は避けて通ることができない。そのため私はだいぶ前から「同人誌の国際化」「同人誌輸出」を唱え続けてきた。

自由貿易の促進と資本主義経済の徹底発展拡張は私の持論である。

つまるところ、結局は日本の発展はそれ以外に方法が無いのだ。

東京で最大の同人誌のイベントが年二回開かれる「コミケット」だ。

その内部は想像を絶する。30万人規模の参加者、内部はそれは

かつての東京証券取引所の風物詩「ゲキタク売買」をほうふつとさせる。

最近は随分と楽になった。かつての晴海のときは暑さとめまいに苦しめられて、

生きて帰れるかもわからなかった。ジュースを買おうにも自販機はすでに売り切れ、売店も品切れだったし、行列は2時ごろまで待たされた。

今ほどコンビニが発達してなかったから、弁当は自作で持参した。

現在の有明は行き方だけでも10通り近くある、が、晴海時代と変わらないのは名古屋から来る場合は有楽町だけは必ず通ることだ。

食事はコンビニや弁当屋のおにぎりや弁当。資金がそこをついてもATMがある。しかも晴海には無かった冷暖房がある。

しかし最近は参加者も減ってきた。以前は移動にも人の波であったのが、

今は両手を広げて歩けるようになった。しかも毎回目に見えて混雑が緩和されている。これではもう同人誌に未来は無いぞと思った私は一度は手を引くことを考えた。だが、共に戦った仲間たちがいた。

「細川!来年も出て来い!」「変にけじめつけるんじゃないぞ!」

もうすこしやってみるか、その気持ちで思いとどまった。

いったい私をそこまでおいこんだのはなんだったのか?

遊びで同人誌ができる時代はやがて収束に向かう。

なぜなら、先ほど言ったみたいに、本を見ずに内容がわかるようであれば

誰がそんな本を買うだろう?

現在のまま同人誌の世界が続いていくことは歴史は決して許さない!

歴史はこの世にあるすべてのものにたゆみない努力と変革を要求する。

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