61.同人誌の世界(前)

第61話

ここまで私は歴史を通し、次のことを訴え続けてきた。

新しい創造と挑戦的な経営、それこそが新たな日本を作る。

たとえば、名古屋にその本拠を置く日本舞踊「西川流」がいい例だ。

西川流は伝統にとらわれず、数々の新しい芸風を取り入れ、また、海外公演などで絶賛を博し、現在はその功績や芸風を疑うものはいない。

日本舞踊というと、琴の音が響く中で静かに女性が舞うものと思いがちだが、

「西川流」は市川猿之助「スーパー歌舞伎」並みの派手さと斬新性を持つ。

むろん、派手さだけではいつかは飽きられる。「西川流」の偉大さは

伝統の枠を、日本舞踊という枠を超えたことにあるのだ。

トヨタも、阪急電鉄もそうした既成の枠や概念を壊すことから発展が始まった。

同人誌もだれかがそんな考え持たないものか?

よく、「同人誌は何でもあり」という人がいる。本の形態に限れば確かにそうで、

印刷ではできない変わった形態の本が随所に見られる。

しかし、内容はどうだろう?一時期問題になった「成人向け」や過激な表現のものは別として、特に少女漫画は細分化されて、もはやある一定の区画や雑誌では作品の内容を見ずともだいたい同じ傾向の話ばかりだ。これではまるで

ファーストフードが集まって商店街を形成しているようなもので、そんな

商店街ではだれもが次第に行きたくなくなるだろう。栄養面でも心配だ。

町のレストランがみんな儲かるからとファーストフード店に衣替えし、

町中ファーストフードだらけになったらぞっとする。

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