60.松陰神社

第60話

世田谷区若林、ここにもその犠牲者が眠っている。近代日本の先駆者

吉田松陰である。彼は人の才能を引き出す力に優れていて、牢内でも囚人の

尊敬を集めたという。

彼が長州に帰り、「松下村塾」を開いてしばらくしたとき、「あばれ牛」と呼ばれる藩の重役のお坊ちゃんがやってくる。その名は高杉晋作。手がつけられない悪童でありながら、成績は誰よりもよかった。

エジソン、ベーブルースなど悪童が後に偉大な功績を残した例は多い。

そして、悪がきほどかわいいもので、後に高杉晋作は松蔭の身の回りを世話した。後に安政の大獄で松蔭が処刑されると桂小五郎らが仮葬したが、

晋作はさらに長州藩主の所有林だった若林に改葬した。これが世田谷区に現在も残る松蔭神社である。

そして、松蔭が育てた弟子たちが次々世の中を変えていった。

高杉晋作が民衆を集めて結成した「奇兵隊」は幕府軍を破り、そのままアジアで2つだけ成功した革命のうちのひとつといわれる明治維新へと突き進むのである。そして、弟弟子の伊藤博文が初代内閣総理大臣としてアジア初の憲法、

議会を作り、日本をアジア最初の近代国家、世界の列強入りを果たすのである。

アジアで成功した革命は、明治維新のほかは、1921年のケマル・アタチュルクによるオスマン王朝を倒した「トルコ革命」だけだといわれている。

今日トルコはイスラム圏にありながら、イスラムの文化を否定している。

政教分離、男女平等、女性参政権が認められているのはイスラム世界では

トルコだけである。この点はかつての日本に似ている。

そのうち、トルコは日本のごとく経済力をつけてイスラム世界をリードし、

やがて多くのイスラムの国がトルコを見習うようになり、日本を脅かすに違いない。現に日露戦争の勝利や太平洋戦争の日本軍の活躍は多くのアジアの人たちに希望を与え、多くの民族運動を引き起こした。その結果が自国の独立に結びついた例も少なくない。アジアどころか、フィンランドやアフリカもみなそうである。イランでは改革派が勝利したが、これも歴史の潮流の氷山の一角だと私は見る。

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